プロジェクト

  • 屋上緑化
  • 自然換気システム
  • プロジェクト詳細

―2005年に開催された愛・地球博の跡地に建設された施設ということですね。
河合:はい、記念公園の中心となる施設としてプロポーザル提案を行いました。愛・地球博の理念を活かすことを考え、自然エネルギーを利用した技術をできる限り取り入れる提案をしました。結果的に、建築というよりは「環境装置」のような位置づけになり、半屋外の空間が広がった、あまり見たことのない建築になったと思います。
石田:愛・地球博で紹介された環境共生技術を目に見える形で残そうということと同時に、会場跡地の修景の一環として、市民の交流の場を作るという発想でした。地球博のランドスケープコーディネーターであった涌井雅之先生をはじめ、社外の色々な人が関わってアイデアを出し合いながら進めたプロジェクトでしたね。
河合:設計者として、基本構想などのベーシックな考え方を最後まで生かすことが我々の仕事だと思っているのですが、この件に関しては当初議論したことがほとんど実現されました。お金がないから何かをやめるという概念はなかったですね。
石田:発注者である愛知県の方々も、根本的な理念の部分を大切にされていたことが大きかったと思います。
河合:建物自体は非常にシンプルで、大きな屋外空間の中にいくつかの部屋を置き、そこに丸い体育館がくっついているという形です。基本設計の段階では、施設を利用するNPOや市民へのヒアリングを何度も行いました。パースや模型、CGなども使いながら、できる限りイメージを共有しながら作っていきましたね。
石田:設計の関係者は、設計アドバイザーや造園の専門家、照明の専門家、構造や機械設備、電気設備の担当者など、社内外で20名前後の大きなチームになっていました。そこに市民の方や行政の方が加わって打ち合わせを重ね、一方で工事監理を担当した中部支社とも連携しながらプロジェクトを進めました。そして2010年7月に建物が竣工。10月のCOP10名古屋では、サテライト会場として利用される予定です。
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(上)屋上緑化
(下左)壁面緑化とかごラジエータ (下右)木製受水槽

―万博で紹介された環境技術が盛り込まれているということですが、どんな技術ですか。
市川:環境技術のテーマは、光・風・緑・木・水・土に分かれています。「光」については、自然採光や透過性の太陽光発電を取り入れました。
石田:トップライトとして光を通す透過性の太陽光発電パネルを使って、採光しながら発電もするという方式です。
市川:この他、「風」ではプロペラタイプの風力発電を導入しました。丘や体育館の上部には通風口がついていて、常に風が流れる状態になっています。さらに「緑」は屋根の上に30cm以上の土を盛って緑化。「木」のテーマでは、内装の仕上げに愛知県産の間伐材を使っている他、受水槽や暖房用のバイオペレットにも県産の木材や木くずを使用しました。「水」では井戸を掘って井戸水を空調に使い、トイレの水としても再利用しています。「土」では、クールピットなどによって地中の低い温度を利用して外気を冷やすシステムを採用しました。
河合:まさに、建物自体がエコですね。
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―特徴的なシェル状の構造についてはいかがですか。
河合:構造計算では、担当者がかなり苦労していました。しかしこの構造のおかげで屋根の緑化ができ、半屋外の気持ち良い空間も実現できたのですから、当社のテクノロジーの部分と意匠の部分がマッチして実現した建築だと思います。
市川:屋根の部分のコンクリートには、重量を少なくするために発泡スチロールの玉のようなものを入れました。その数は10万個くらいと聞いています。
石田:ボイドスラブ工法といって、一般的には住宅などで無梁版スラブとする場合によく使われる方法ですが、3次元曲線形状のシェル構造で採用するにはスラブ内配管への配慮など、綿密な計画が必要です。
市川:玉を動かさずにコンクリートを打つのが難しいのです。実際に現場近くで、原寸の1スパン分のモックアップを打設してみました。やってみないと分からないことがたくさんありますから。
河合:コンクリートの仕上がり状態や、手すりの状態が妥当かなど、お客様と設計チーム、そして施工者がきちんと確認してから実際の建物の施工に入りました。ここまで大々的なモックアップを作るのもあまりないことですね。

(左端)型枠検討模型 (左2番目)モックアップによる検証 (右2番目)型枠施工 (右端)壁内PC配管状況

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施設内観

―このプロジェクトにおける「山下設計らしさ」とは?
河合:プロポーザルや基本設計での提案を、成果品としてほぼそのままの形で実現できたことではないでしょうか。当社のスタッフでなければきっと誰かが挫けていただろうと思いますし、そこに当社の強みがあると自負しています。加えて今回は、行政の担当者の方も熱い思いを持った方が多く、一緒に頑張って実現しようという気持ちがプロジェクトチーム全員にありました。
石田:会社も部署もそれぞれ違う立場の人たちが集まっているので、意見が食い違う場面もたくさんありますが、対話をしながら模索してみんなが納得する一つの形を見つける、その一つの完成形だと思います。それぞれの知恵を持ち寄って対話で一つの答えを見つけるというのが、山下設計らしい形ではないかと感じています。
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プロジェクトデータ

愛・地球博記念公園 地球市民交流センター(愛知県愛知郡)

  • 屋上緑化
  • 自然換気システム
  • プロジェクト詳細
構造
RC造一部PCaPC造(交流センター)、S造(体育館)
階数
1階
延床面積
6,798㎡(交流センター)、2,025㎡(体育館)
竣工年月
2010年10月
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