「まるで一枚の絵みたい。」
「自然のパノラマみたいで、本当にきれい。」
「伝統と現代が融合していて、金沢らしい空間だと思う。」
これは「しいのき迎賓館」オープンを伝える新聞記事に紹介された来場者のコメントである。2010年4月10日のオープンから3ヶ月で、金沢市の人口を上回る50万人超の来場者数を記録した客足は未だ衰えず、レストランの予約も難しい状態だという。実はこの成功の背景には、2003年にオープンした石川県庁舎のプロジェクトがあった。これを担当した設計者の筬島は1995年から金沢の街に通いつめ、その魅力を頭ではなく感覚で理解していた。だからこそ、石川県民にここまで歓迎される施設の発想が生まれたのだと言えるだろう。
「自然のパノラマみたいで、本当にきれい。」
「伝統と現代が融合していて、金沢らしい空間だと思う。」
これは「しいのき迎賓館」オープンを伝える新聞記事に紹介された来場者のコメントである。2010年4月10日のオープンから3ヶ月で、金沢市の人口を上回る50万人超の来場者数を記録した客足は未だ衰えず、レストランの予約も難しい状態だという。実はこの成功の背景には、2003年にオープンした石川県庁舎のプロジェクトがあった。これを担当した設計者の筬島は1995年から金沢の街に通いつめ、その魅力を頭ではなく感覚で理解していた。だからこそ、石川県民にここまで歓迎される施設の発想が生まれたのだと言えるだろう。
新庁舎への移転が決まった時点で、旧庁舎を含む跡地の活用については議論が始まっていた。県都の中心であり、兼六園など歴史的な施設に囲まれた好立地。様々な案が浮かんでは消えていくなか、山下設計の基本構想提案がプロポーザルを経て採用となった。筬島は提案当時をこう振り返る。「今回は、建物の設計だけでなく土地活用の考え方から運営に至るまで、総合的な提案が求められました。従って、社外の様々な専門家の方に協力をいただきながら、いかにお客さまが望むサービスをコーディネートして提供できるかということを考えました。」
基本構想の提案にあたっては、大きく3つの課題が出されていた。一つは事業性の問題。例えばこの場所でレストランは成り立つのかなど、公共施設として周辺に与える影響なども含めて、マーケティング専門会社との綿密な議論が行われた。二つ目は歴史的な建築物の保存をどうするか。旧庁舎のシンボルであり国の天然記念物でもある「堂形のシイノキ」を含め、どう保存するのかについて徹底的に検討した。三つ目は周辺施設との関係性。敷地全体の回遊性を生み出しつつ、周辺の高い歴史的価値を誇る施設群をどう見せていくかが、観光地でもある金沢にとって重要なテーマだった。
基本構想の提案にあたっては、大きく3つの課題が出されていた。一つは事業性の問題。例えばこの場所でレストランは成り立つのかなど、公共施設として周辺に与える影響なども含めて、マーケティング専門会社との綿密な議論が行われた。二つ目は歴史的な建築物の保存をどうするか。旧庁舎のシンボルであり国の天然記念物でもある「堂形のシイノキ」を含め、どう保存するのかについて徹底的に検討した。三つ目は周辺施設との関係性。敷地全体の回遊性を生み出しつつ、周辺の高い歴史的価値を誇る施設群をどう見せていくかが、観光地でもある金沢にとって重要なテーマだった。
こうして準備された山下設計の提案は、「一等地に“空地”を設ける」という大胆なものだった。周辺は金沢城、兼六園、中央公園をはじめ、旧津田玄蕃邸、四校記念館(旧第四高等学校)、歴史博物館(旧陸軍第九師団兵器庫)、兼六園広坂休憩所(旧陸軍第九師団師団長官舎)、能楽堂舞台など、江戸時代から明治、大正、昭和の各年代の施設が集結している貴重なゾーンとなっている。
「歴史的に価値のある旧県庁者の建物と優れた景観を活かすことを最も重視しました。私たちは敷地を、あくまでも兼六園や金沢城公園の緑豊かな歴史的景観を美しく見せるための余白となる空間と捉え、敷地内のデザイン密度を上げるのではなく『何もない方が良い』という提案をしたのです。」それは、金沢の街を深く知り県民の心情を肌で感じていた筬島だからこそ提案できたプランだった。
「歴史的に価値のある旧県庁者の建物と優れた景観を活かすことを最も重視しました。私たちは敷地を、あくまでも兼六園や金沢城公園の緑豊かな歴史的景観を美しく見せるための余白となる空間と捉え、敷地内のデザイン密度を上げるのではなく『何もない方が良い』という提案をしたのです。」それは、金沢の街を深く知り県民の心情を肌で感じていた筬島だからこそ提案できたプランだった。
金沢城の石垣を望む
(上)レストラン ポール・ボキューズ(2F)
(下)カフェ&ブラッスリー ポール・ボキューズ(1F)
リニューアルにあたり、歴史的価値が高い旧県庁舎の正面部分と、国の天然記念物である「堂形のシイノキ」は一体のものとしてそのまま残すことが前提であった。一方、反対側の北側面はサッシのない全面ガラス張りとし、正面に位置する金沢城の石垣と兼六園が芝生越しに見えるよう設計した。夜にはライトアップされた景観が、幻想的に浮かび上がる。
「金沢城の石垣を美しく見せることを最優先に考え、一面ガラス張りという結論に達しました。逆に外からは、保存された旧県庁舎の壁がガラス越しに見えるようになっています。」2階のレストラン「ポール・ボキューズ」からの眺望も素晴らしく、席は1ヶ月以上先まで埋まっているとのこと。フランス・リヨン郊外で約半世紀も三ツ星に輝く名店ゆかりのレストランでは、地元の素材を使ったメニューが人気を呼んでいる。少々敷居が高いと見る向きは、併設されたカフェなら予約不要で利用できる。
「金沢城の石垣を美しく見せることを最優先に考え、一面ガラス張りという結論に達しました。逆に外からは、保存された旧県庁舎の壁がガラス越しに見えるようになっています。」2階のレストラン「ポール・ボキューズ」からの眺望も素晴らしく、席は1ヶ月以上先まで埋まっているとのこと。フランス・リヨン郊外で約半世紀も三ツ星に輝く名店ゆかりのレストランでは、地元の素材を使ったメニューが人気を呼んでいる。少々敷居が高いと見る向きは、併設されたカフェなら予約不要で利用できる。
「古いものをどうやって残していくか。それはこれからの社会的なテーマでもあります。」と筬島は語る。地元・北國新聞の社説でも、しいのき迎賓館は「『歴史の審判』に耐えうる施設」と評価された。もはや単に古いものを壊して新しいものを作ればよいという時代ではない。山下設計が80年の歴史の中で残してきた建物の中にも、コンバージョンなどによって未来に受け継いでいくべきものが数多く存在する。新たな価値を生み出し続ける組織設計事務所として、山下設計は活動のフィールドをさらに広げていく。








