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黒部市庁舎

街と人のつながりを創り出す庁舎

人と街をつなぐ工夫、「2つの空間構成」

黒部市庁舎の建て替えに向けては、プロポーザルが行われた。その際の課題として、市内に分散していた行政機能と保健センターを集約するとともに、市民が集う交流スペースを付加することで「市民の参画と協働を推進し、黒部市発展の核となる庁舎」を実現することが求められていた。
これに対して山下設計が提案したのは、“人のつながり”と“街のつながり”を生み出す空間構成、すなわち、「行政棟」と「交流棟」の2棟を中央のエントランス部分で連結するという構成だった。
「L字型の敷地や街の構造を考慮して、議会・行政機能を集約した行政棟と、会議室や食堂、保健センター、市民交流サロンを備えた交流棟に分けるという提案です。交流棟は市民の日常的な交流の場を集約してピロティで2階に持ち上げ、敷地内を自由に通り抜けられるようにし、市民が集まるイベント空間としても利用ができるようにしました。」と設計本部長の筬島は語る。この2つの空間構成の提案は、高い評価を受けた。
「行政とは別の建物として交流棟を設けたのが大きかったですね。他社の案はすべて1ヶ所に高層棟を建てて、その中に全機能を集約するような案だったと聞いています」。設計本部副本部長の和田は、勝因をこう分析する。庁舎の周りには住宅地が広がるため、高層棟が与える周囲への影響も配慮しつつ、街の新旧2つの商業地域をつなぐ役目も意識した提案が受け入れられたのだった。

高騰する工事費との闘い

交流棟は、長期応力と地震力をV字型のブレース柱に負担させることで、柱を極力少なくするとともに、自動車が通るための幅約25mの道路を通す空間を創出することに成功した。
「庁舎のあり方について、新しい試みを行ったという認識があります。本計画では市民が利用する専用スペースとしてゾーニングすることで、セキュリティの面でも閉庁時間や土日利用を可能とするなど利便性を高めることができました。」と建築設計部門副部長の三田は語る。
しかし、竣工までの道のりは決して平坦なものではなかった。ちょうどこの時期、工事費が高騰しはじめたのだ。機能・性能を落とすことなく、コストを抑えるためにスタッフは知恵を絞った。
「全セクションのスタッフが集まって何度もミーティングを重ねましたし、立ち話レベルでも頻繁に打ち合わせを行っていました。同じ性能の別の材料に変更したり、形状を少し変えてもらえればコストを抑えることができるとわかれば採用したり、それぞれが目標を立てて取り組みました」と、コスト設計部部長の植村は当時を振り返る。

部門間のミーティングを重ねて、あらゆる課題を解決

第3設計部主任の高橋も、提案時の形や機能性を損なわないように注意しながら、課題を解決するために試行錯誤を繰り返した。「コストはもちろんクライアントからの要望や法的なことなど、プロジェクトを進めていく上で再検討しなければならないことはたくさん出てきます。その際には必ずコンセプトに立ち返って判断するようにしていました。自分が進めたい方向性が決まると、佐藤さんや植村さんのところに行って何度も相談しました」。
構造設計部主任の佐藤は「コンセプトを実現するためにどうしたら良いかを常に考えながら基本設計と実施設計を行いました。V字型のブレース柱構造では斜めの柱のため現場の施工ではかなり苦労をしましたが、施工者の方といろいろ協議しながら解決していきました。」と語る。
様々な社員に山下設計の良さを尋ねると「チームワークの良さ」「年齢や部署に関わらず自由に発言できる雰囲気」という答えが多く返ってくる。このプロジェクトでもそのような部署間の連携の良さが強く表れている。
また、山下設計ではプロジェクトをスタートする際、スタッフ全員でのキックオフミーティングを必ず行うようにしている。重要なコンセプトや情報などを共有することでチームマインドを高めることができるとともに、若手への伝承という意味合いも兼ねているのだ。


取締役常務執行役員 西日本統括 筬島亮


執行役員 中部支社長 和田直


第3設計部 副部長 三田知男


第3設計部 主任 高橋良弘


執行役員 コスト設計部 統括部長 植村 潤子


構造設計部 主任 佐藤まどか

※役職は2018年7月現在